
山岸俊男
本書の中心的メッセージは1つ、「集団主義社会は安心を生み出すが信頼を破壊する」です。このメッセージがどのように導き出され、何を意味しているのか。本講義では、4週間をかけて、それを辿っていきます。
鍵となるのは信頼に関する3つのパラドックスです。それを整理していく中で、本書の肝である信頼の「解き放ち」理論が生まれます。信頼の「解き放ち」理論とは、信頼には(当時言われていた)関係強化の側面だけではなく、関係拡張(固定した関係から解き放ち、新しい相手との自発的な関係の形成に向かわせる)の側面がある点を強調する理論です。同理論を精緻にしていく中で、本書の中心的メッセージも生まれます。そして、それではどうすればいいのか。この点は、実は、読者に開かれています。
また、本書は一種の日本文化論でもあります。そのため、本書を読むことで、日本文化(日本社会)の筆者なりの見通しを1つ知ることもできます。1998年に書かれているため、今の日本とは状況(環境)が大きく変わっていますが、そのような状況変化に対応することの大切さを本書では説いていました。我々は本書の提言を時代遅れのものとできるのか、そうではないのか。今読み返しても、考えさせられるものがあります。
本書は基本的には筆者の社会心理学研究の成果をまとめたものです。しかし、非常に読みやすくできています。「研究の過程をなるべく「謎解き」としての側面を残したかたちで再構成するという方針」(p.12)で本書が書か��ているからです。専門用語も出てきますが、それについては補足的に解説します。
皆さんのご参加を心よりお待ちしております。
現在、新規受講の申し込みは受け付けておりません。すでに受講中の方は引き続き動画・資料にアクセスいただけます。
第1回講義では、以下の2点についてお話ししたいと考えています。
・本講義の進め方 ・山岸俊男流社会心理学と、その思想の(私なりの)エッセンス
講義は全体としてどのように進んでいくのかや、進めるうえでのお願い事項等についてまず説明します。
その後、『信頼の構造』を読む上での参考知識をご紹介したいと思います。この知識がなくとも本書は読めます。ただ、本書を読む際の見通しがよくなるかなと思います。
なお、第1回は本書を読んでくる必要はありません。読書は本講義後からスタートします。
第2回講義では、本書の鍵となる3つのパラドックスを押さえるとともに、そのパラドックスを解くために必須の「信頼の定義」を見ていきます。信頼の定義を押さえられれば、パラドックスのうち2つは解決します。ここでのポイントは、信頼と安心の違いです。
あと、時間があれば、社会的不確実性について雑談したいと思っています。この概念、相応の現象の見通しをよくしてくれる、とても素敵な概念です。
なお、本書は基本的にとても読みやすくできているので、本来であれば「解説」は不要かもしれません。ですので、皆さんからのご意見・ご質問があれば、そちらを大切にしたいと考えています。皆さんからの積極的なご意見・ご質問、お待ちしています。
第3回講義では、本書の軸、信頼の「解き放ち」理論を押さえます。第4章は同理論に関わる実証的結果の説明ですので、どちらかというと、第3章の方が大事です。ですが、どういう研究から理論が導き出されたのか、という点がわかると理論の理解も深まると思います。実証的結果では心理学の専門的技術が使われていますので、本書で説明が足りないと思われる箇所は補足します。
なお、この回も、皆さんからの積極的なご意見・ご質問、お待ちしています。
第4回講義では、信頼の「解き放ち」理論をより直接的に検証することを目指した実証的結果の説明です。実験の内容と結果の説明に重点が置かれている章で、実験内容(実験に参加した人はどのようなことをしているのか)を想像しながら読むと、読みやすいと思います。ここも、技術的な部分がありますので、説明が足りないと思われる箇所は補足します。
なお、この回も、皆さんからの積極的なご意見・ご質問、お待ちしています。
第5回講義では、信頼の「解き放ち」理論にあるミッシング・リンク(欠落部分)を押さえます。同理論では(少なくとも)1つ大事な点が抜け落ちていますが、それは一体何なのか。そして、どうすれば埋まるのか。考えてみたいと思います。また、終章は、本書の中心的メッセージを少し離れて、裏メッセージについてです。裏メッセージを理解することで、表メッセージの深みも増すと思われます。
なお、この回も、皆さんからの積極的なご意見・ご質問、お待ちしています。